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2019年02月20日

コラム/最適物流の科学⑤

最適物流の科学

 

弊社社長の菅が、2017年12月に『最適物流の科学―舞台は36106万平方km

海を駆け巡る「眠らない仕事」』という書籍を出版しました。

 

そこで、本ブログでも、その書籍から抜粋した内容を

毎週1話ずつ、ご紹介していきたいと思います。

 

第五回となる今回は、世界経済という大きな枠組みを出発点に海上輸送とそれを担うコンテナ船についてさらに踏み込んでいきます。

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「増え続け、流通も複雑化する世界の海上荷動量」

 

グローバル時代の今日、世界経済において海上輸送は大きな役割を果たしています。前章で記したように、島国である日本にとって海外との貿易を担う海運業は、まさに生命線といっても過言ではありません。

 

本章ではまず、海上における実際の荷動きの動向を踏まえ、海運の重要性をさらに掘り下げていきます。その上で、海上輸送の特徴、中でも今日主流を占めているコンテナ船の歴史やそのメリットを取り上げ、そして具体的にどういう流れで、どのような業種の企業によって貨物が輸送されているのか、業界の仕組みについても紹介します。

 

「右肩上がりの需要。果たす役割も増す」

 

日本近海に限らず、世界中の海域を夥しい船舶が日々行き交っていることは先の章で見た通りです。では実際、それらの船によってどれだけの貨物が運ばれているのでしょうか。

 

世界の海上荷動量のデータを参照すると、1年間の合計量は約100億tとなっています(2014年)。

これを2004年のデータと比較すると、10年間で約1.4倍も増加していることがわかります。年ごとの動きでは、リーマンショックの影響を受けた2009年を除き、一貫して増加傾向をたどっています。品目別では原油を除けば、いずれの品目もほぼ継続して右肩上がりとなっています。

 

ではコンテナ貨物はどうでしょうか。これも、他の品目同様に増加傾向を示しています。さらに詳しく見ていくと、その伸び幅は特に大きな部類に入ることがわかります。2004年と比較した場合、その伸びは全体では約1.4倍でしたが、コンテナ貨物は10年で約1.8倍となっているのです。

 

海上の荷動量が年々増加傾向にある背景の一つに、グローバル化に伴う国際分業の進展が挙げられます。原材料を輸入し、それを加工した工業製品を輸出することを加工貿易といいますが、昔であれば、そこで扱われる物資の動きは比較的シンプルな流れで捉えられていました。ところが今日では、原材料だけでなく半製品の国際的な流通も拡大しているため、流れは非常に複雑になっています。つまり、原材料から最終的な完成品に至るまでに、各物資が数多くの場所を経由しているということです。

たとえば、米Apple社のiPhoneの部品は、アメリカだけでなく台湾や日本、さらには中国や韓国、ドイツなどのメーカーが供給しています。複数の国でさまざまな部品を製造し、それを一カ所に集めて組み立てるわけです。その各部品を原材料に遡り、半製品を経て完成品に至るまでのルートを結ぶと、日本を含め地球上に無数の線が描かれることになるでしょう。

 

輸送する貨物の量が多くなれば、それに応じて船舶における貨物の積載量である船腹量も増大させる必要が生じます。実際、コンテナ船の船腹量は2000年以降一貫して増加しています。世界的な荷動量の増加、それに伴う船腹量の増加は今後も続いていくことが予想されます。そこで海運業の果たす役割も、当然増大していくでしょう。

 

「コンテナ取り扱いで世界の半数を占めるアジアの存在感」

 

世界的にコンテナ貨物量が増加している中、特に高いシェアを占めているのがアジアの国々です。世界全体のコンテナ取扱量のうち、アジア諸国が占める割合は1990年の段階で40%を下回っていました。しかし以後大きな伸びを見せ、2002年には約50%に達しています。その後も増加傾向は続き、2014年時点では54.9%となっています(『SHIPPING NOW 2016~2017』36ページ)。

 

船腹量でもアジア諸国が大きな割合を占めています。世界全体の船腹量の中で、アジアの船会社が運航する船の占める割合は43.3%です。さらにその内訳では、日本が13.3%(約2億3068万重量t)のシェアを占めています(日本の船会社が保有する日本籍船と海外子会社が保有する外国籍船の合計)。

 

これは世界的に見ても、ギリシアに次いで2番目の規模に相当します。これに次ぐのが中国で9.1%(約1億5756万重量t)です。アジアにおけるシェアは、日本と中国の2国で5割以上を占めていることになります(数値は2015年1月、同21ページ)。

 

コンテナ輸送においてアジアが大きな位置を占めていることは、各国の港における取扱量ランキングからも見て取れます。2015年時点で、世界の主要港におけるコンテナ取扱量ランキング1位となっているのは中国の上海港(3,654万TEU)です。2位がシンガポール港(3092万TEU)で、3位から5位は深圳(2,420万TEU)、寧波(2,062万TEU)、香港(2,011万TEU)と、トップ一10のうち、実に7港を中国が占めているのが現状です。

 

一方、日本の港は30位にようやく東京港(490万TEU)が入るという状況です。1980年の時点では、日本の神戸港(約146万TEU)が世界第4位にランキングされていましたが、以後日本の港の地位は年を追うごとに低下していきました(取扱量は速報値、同34ページ)。

もう一点注目しておきたいのが、商船の建造量です。

 

この分野でも、アジアの役割の大きさが見て取れます。2015年の世界シェア1位を占めるのは中国(37.2%)、次いで韓国(34.5%)、そして第3位に日本(19.3%)がつけています(同22ページ)。この3カ国で、世界シェアの9割を占めているのです。

 

20年前は日本が世界一の建造量を誇っていましたが、その後韓国が日本を追い越し、さらに中国の伸張によって日本のシェアは低下していきました。とはいえ、世界的にも日本がまだ商船建造において大きな役割を果たしていることは確かです。さらに近年は、日本の造船業界に復活の兆しも見られるようで、今後の動向が注目されます。

 

「荷動量は横ばいで推移するものの、シェアは低下」

 

世界的に荷動量が増加している中、日本に限った場合では、同様のことがいえるでしょうか。残念ながら答えはノーです。90年代頃までは右肩上がりの傾向が見られましたが、2000年代に入ると、2009年に大きく低下したのを除き、ほぼ横ばいの状態が続いています。

 

伸び悩んでいるという日本の荷動き状況は、相対的に世界における日本の占める割合が低下しているということを意味します。実際、90年代以降、日本のシェアはほぼ一貫して低落をたどっています。2004年時点では世界全体の14.5%を占めていましたが、2014年には9.1%にまで低下しています。

 

総体での日本の荷動量が横ばいで推移する中、輸出だけに注目すると増加傾向が見て取れます。この10年間、輸入についてはさほど変化はありませんが、輸出についてはそれ以前から引き続き、右肩上がりの傾向があるのです。この点は注目しておきたいところです。

 

次にコンテナ貨物に絞って荷動きの動向を追ってみましょう。世界全体では、2004年の時点で3億3800万TEUでしたが、10年後の2014年には6億7926万TEUになっています。実に2倍です。

 

日本を除くアジア地域(韓国・中国・香港・台湾・タイ・フィリピン・マレーシア・シンガポール・インドネシア)は1億4885万TEUから3億2639万TEUと、同様に約2.2倍となっています。そして日本は、2004年に1643万TEUだったのが2014年には2074万TEUまで伸び、世界平均に比べると伸び幅は小さいものの、10年で約1.3倍に拡大したことになります。

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つづく。

次回は、「我が国の貿易は九割以上を船が運ぶ」というテーマになります。

 

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投稿者

ジャパントラスト株式会社 

 


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