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2019年10月09日

コラム/最適物流の科学㉗

最適物流の科学

 

弊社社長の菅が、2017年12月に『最適物流の科学―舞台は36106万平方km

海を駆け巡る「眠らない仕事」』という書籍を出版しました。

 

そこで、本ブログでも、その書籍から抜粋した内容を

毎週1話ずつ、ご紹介していきたいと思います。

 

第二十七回となる今回は、「荷主が知っておきたい海運会社の種別と特徴」というテーマでお話しいたします。

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荷主が知っておきたい海運会社の種別と特徴 ~物流の依頼で押さえておきたい三つの基準

 

前章では、国際物流に携わる事業者の中で、フォワーダーについて見てきました。第一章で紹介したように、海運業界にはこれら以外にも多様な企業があり、それぞれに特徴、長所・短所があります。

本章では、実際に海外に向けて貨物を輸送する場合を想定し、何を基準に事業者を選択すればよいかという視点から国際物流業者について掘り下げていきます。そこで国際物流会社を六つに分類し、各々のカテゴリに属する会社の特徴を確認します。その上で、海運会社を選ぶための具体的な基準について、荷主の立場から客観的に判断できる三つの項目を取り上げて考察していきます。

貨物の輸送を請け負う事業者は数多くありますが、それぞれ規模や特徴、得意分野が異なります。企業名も多種多様で、名前から業務内容を把握するのが難しいケースも少なくありません。ここでは、海外への貨物輸送を請け負う企業、中でも外航海運に携わる事業者を六つに分け、それぞれの強みと弱みを確認していきます。

説明に際しては、カテゴリ間の違いをできるだけ明確にするため、あえてマイナス面も強調する形で記しています。ただ、あくまでも全般的な傾向として述べたものですので、ここに明記された事柄がすべての企業に当てはまるというわけではありません。

①船会社

第一章で説明した通り、実際に船を所有し、それを運航する会社を指します。船舶以外にも、ターミナルやコンテナなどに膨大な投資をしているところが特徴です。また、世界中に広い支店網を持ち、全世界にサービスを展開しています。

船の運航が主業務なので、内陸輸送は海上輸送に付随する業務として請け負います。輸送以外の梱包、通関、バンニングなどは基本的に業務外となります。

自社船を使ったサービスの提供がベースとなるため、スケジュールの選択肢は、自社のサービスの範囲内に限定されます。したがって、基本的には自社船に空きスペースがない場合はブッキング(船腹予約)を受けることができません。一方で、自社船でサービスを提供しているので、スペースコントロールができるという強みがあります。スペースがタイトになった場合、自社のブッキングを優先し、フォワーダーなどからのブッキングを断ることもできます。

船会社が持つスペースの設定運賃は需給バランスで決定されるため、変動が大きくなることがあります。ただ大手の有名実荷主(商社、メーカーなど)に対しては、船会社間で激しい競争があるため、安値を提示する傾向もあります。そのため、荷主(ボリューム)によって運賃に差が生じます。

なお、近年は船腹の過剰供給によって運賃が歴史的な下落に見舞われています。船会社は経営規模の大きな企業ですが、そうした事情から厳しい経営を迫られています。

②乙仲、倉庫業者、通関業者

基本的に日本国内の作業がメインの物流業者で、通関、保管、国内配送、バンニング、梱包などを主な業務としています。国内物流を得意としており、トラックや自社倉庫などを保有する他、港湾の現場作業員も抱えています。貨物そのものを実際に手をふれて作業していることから、商品に関する豊富な知識が蓄積されている点も特徴です。

船は保有しておらず、海上輸送においては船会社の船腹を借りる利用運送となります。多くの船会社のサービスが利用できるとともに、自社で行なう国内作業から海上輸送までのスムーズな連携も可能です。また海上輸送を請け負った際は、荷主にとっては支払い窓口を一本化でき、一括で任せられるという利点があります。

ただ海上輸送は付帯サービスとなるため、船会社からの仕入れは専業フォワーダーよりも高くなる傾向があります。競合する他の乙仲へは営業に行くことができないため、集荷力は限定されています。また、海上輸送は収益の柱ではないため、本業である国内物流に比べると力の入れ方は弱くなります。国際複合一貫輸送についても、同様に国内作業に付帯的な位置づけとされる傾向があります。

③エアーフォワーダー

航空輸送がメインで、これを収益の柱としています。営業マンは航空輸送に関する知識が豊富で、その業務獲得に力を入れています。一方、海上輸送は本業ではないため、付帯的な位置づけとされる傾向があります。

海上輸送から航空輸送への急な切り替えが社内でできるため、この点に関しては柔軟に対応できます。ただ、航空輸送と海上輸送で担当者が違うことも多く、すべてのケースでうまく連携がなされるとは限らないという側面もあります。

全世界の主要都市に現地事務所と駐在員を置いているので、輸入国側で日本人スタッフによる均一なサービス、手厚いケアが受けられます。主要国には自社駐在員が複数名います。さらに、自社倉庫を世界中に所有しています。

そうした海外拠点を多く持つことは強みではありますが、同時に固定費が高くなるという点では弱みにもなります。また、現地で他のローカル代理店を使わないため、内陸輸送の費用・サービスにおいて競争原理が働きにくく、この部分の運賃に関しては高くなる傾向があります。競合する他のエアーフォワーダーへ営業に行くことができないという点では、集荷力は限定的です。

④大手外資系フォワーダー

国際的に運営されている外国資本の物流企業で、世界中で陸海空の物流業務を行なっています。自社の倉庫やトラックなどを保有する他、独自に開発したITシステムを駆使して、物流のコンサルタント業務も行なっています。

規模が巨大であるところが最大の特徴だといえます。日系フォワーダー業界一位の日本通運よりも大規模です。同様に世界を結ぶ自社ネットワークも、日系フォワーダーより広大です。後進国にも拠点が多くあり、世界各地に向けて比較的タイムリーに情報の伝達ができるので、荷主にとっては安心感があります。

一方で、外国の拠点に日本人スタッフが不足しているため、日本人のニーズに応じたケアを不得手とする傾向も見られます。また、現地で他の代理店を使わないため、サービスや内陸輸送費用の面で競争原理が働かないという側面もあります。

世界規模で取扱いボリュームが大きく、平均的にどのエリアにおいても競争力のあるレートを持っています。ただ日本のマーケットは世界全体で見ると非常に小さいため、それほど積極的に営業活動を行なっていません。日本支店は、海外からノミネーション案件があった際のケアがメイン業務となっています。

また、仕入れは海外で一括して実施しており、日本発の運賃交渉も国内では行なっていません。そのため日本発の運賃が高くなる傾向も見られます。

⑤商社・メーカー系フォワーダー

商社やメーカーの直接出資によって設立された物流企業で、いずれも親会社の直接出資比率の高いことが特徴として挙げられます。そのため、親会社から請け負った業務の売上高に占める割合も高くなっています。

船舶は保有しておらず、海上輸送では船会社の船腹を借りる利用運送となります。トラックや倉庫などのハードも所有していないところが多く、大半は外部に依存しています。

商社系フォワーダーは、世界中に親会社の幅広いネットワークを持つとともに、多くの輸送ノウハウも持っています。

メーカー系フォワーダーはメーカーの製品輸送に関するノウハウを持つとともに、メーカー依存度が高いため安定的に業務を請け負うことができます。また、いずれも親会社の知名度により、営業がしやすいことも強みといえます。

そうしたメリットがある反面、自社グループとの取引をメインとしているため、だまってても仕事が来るので、コスト競争力が高くないことがあります。また、親会社の扱う商品以外を輸送する経験が多くないため、他の分野の輸送を不得手とする場合が多く見られます。

親会社以外との取引を増やし、競争力を高めることが課題となっていますが、ライバル企業、他社グループとの取引ができないため、その営業範囲は限定されています。

⑥純粋フォワーダー(NVOCC)

倉庫、船などのハードを一切持たない利用運送業者で、海上輸送をメインの業務としています。ハードを所有していないので固定経費が少なく、利益が出る案件だけに注力・投資できると同時に、最適物流の提案ができるところが特徴です。乙仲、エアーフォワーダーなど、いろいろな事業者の貨物を集めているので、貨物量に伴う運賃交渉ができます。また特定の事業者を使わないといけないという縛りがありません。そのため、価格やサービスを基準に、ニュートラルに船会社を選定できることも強みです。

一方で、歴史が浅く経営規模も小さく、知名度の低い企業が多くを占めています。そうした事業者は一般的なイメージとしての信用度は船会社などに比べて高くありません。

フォワーダーには、一本のコンテナに満たない小口のブッキング(LCL)をメインとしている混載業者と、フルコンテナ(FCL)をメインとする事業者があります。このうち混載業者は、当然ながら混載貨物に力を入れているので、この分野では競争力があります。しかしFCLやオーバーゲージ、特殊コンテナについては付帯業務の位置づけで積極的には扱っていないため、運賃は高くなります。

一方のフルコンテナメインの事業者はこれとは逆で、フルコンテナの場合は安く、混載の場合は高くなります。ちなみに弊社は、これに当たります。(その中でも特に、北本発着FCL・全世界へのオーバーゲージを得意としてます)。

 

以上、国際物流業者を大きく六つに分類しました。では、それぞれの特徴を踏まえた上で、さらにその中から一社を選ぶ場合、どんな点に注目すればよいのでしょうか。次節からは、三つの項目から事業者を見極めるポイントを探っていきます。

 

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つづく。

次回は、「見極めポイント① 海外拠点(現地法人・海外代理店の保有)は豊富か」というテーマでお話しいたします。

 

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投稿者

ジャパントラスト株式会社 

 


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